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「門内沢登らないか」と山の先輩から電話があったのは1週間前である。一瞬躊躇した。このところ疲れが抜け切れてなく、体調はすこぶる悪かった。また、翌日は安達太良山の山行予定になっていた。 しかし折角のお誘い、ここで断ったら2度と行けないような気がし、お願いしますと言ってしまった。 初めての門内沢、登ってみたいという前向きの気持ちと雨が降って中止にならないかなという弱気な気持ちを交差させながら1週間は瞬く間に過ぎていった。 しかしその間、入念な靴の手入れと、ピッケル、アイゼンの点検は怠り無く、荷物も吟味してコンパクトにパッキングしておいた。 石転び出合から門内沢を俯瞰 集合時間は午前4時、まだ暗いうちに新潟を出発したが、間もなく空も白み始めて来た。天気予報は晴れ。もう迷いは無く、天狗平に向けひた走った。今日のメンバーは精鋭?3人であった。 飯豊山荘先の駐車場には、既にかなりの台数の車が駐車していた。前夜に来てここで天泊して出発する人も多いようである。 飯豊の稜線に上るにはここからいくつかのコースがあるが、やはり多くは、スキーヤーを含め、石転び沢を登るのであろう。そう言えば、仲間の別のグループも、今日、1泊2日の予定で石転び沢を登ると言っていた。そして、今年最後の山スキーを石転び沢で楽しもうという人も居たようだ。 森林浴にお勧め! ここを歩くだけでもリフレッシュ間違いなし! 身支度を整え、6時少し前に出発した。温見平(ぬくみだいら)まではブナの原生林の遊歩道を歩くが、ここはいつ来ても気持ちの良い場所である。 朝の空気を一杯吸って、のんびり歩きたいところではあるが、先輩達は脇目も振らずスタスタ歩いて行く。20分も経たないうちに温見平に到着し、間もなく砂防ダムに着いた。 早くもしっとりと汗ばんで来たので、1枚脱ぐべく休憩を申し入れたが、ゆっくり歩いているからと言い残してダムの石段を登って行ってしまった。早くも一人取り残されてしまった。恐るべき先輩達である。 タニウツギ映える玉川の清流 砂防ダムの水のカーテン 今年はアチコチで雪融けが早いと実感していたが、ここの雪渓は思いのほか残雪の量が多かった。梅花皮沢(かいらぎさわ)の左岸の山道をアップダウンしながら歩いていると30分ほどで雪渓に降り立つことができた。石は見えなかったが、地図に載っている「下つぶて石」の辺りである。 山道を歩くよりは、雪渓を歩く方がずっと楽である。朝早いせいか、雪も固く締まっており、アイゼンなしでどんどん歩いて行けた。 雪渓の両側には、雪融けと同時に咲くマンサクやカタクリ、ショウジョウバカマ、シラネアオイなど沢山の花が咲いていた。欲しければ行者ニンニクも採れるよと教えてくれたが、今日は横目で見ながら通り過ぎるだけ。 石転び出合 左に石転び沢、右に門内沢 ここからが正念場 やがて、眼前にY字型に2本の雪を一杯抱えた大きな沢が見えて来た。石転びの出合である。 出発から1時間半、思った以上に早く到達した。雪渓歩きのおかげであろう。 この出合から左に行けば石転び沢で梅花皮小屋に突き上げる、右に行けば門内沢で門内小屋に突き上げることになる。 ここで面白いことが起こった。後ろから見ていると、一人の先輩は右に、もう一人の先輩は左に進路を取ったのである。 えぇっ? 一体どっちに着いて行けば良いのだ? 確か今日は門内沢のはずだったな。 程なく、3人とも右の門内沢に入ったが、どうやらもう一人の先輩は石転び沢を登るものとばかり思っていたようである。喧嘩別れでなくて良かった。 石転び沢とマンサクの花 両岸に咲き乱れるカタクリの花 石転び沢も門内沢も地図で見る限りは殆ど同じ沢である。どちらも、石転び出合から、水平距離で約2.5Km、標高差約1,000m、平均仰角は約23度である。 にもかかわらず、石転び沢には多勢の人が入るが、門内沢には殆ど人が入らない。 事実、石転び出合から見上げても、石転び沢には登って行く人影がゴマ粒のように見えているが、門内沢の方は誰も入っていなかった。そして、どちらの沢も上部は雲が立ち込めていて見ることができなかった。 この違いは一体何なのだろうとその時は不思議に思った。 ところが、稜線に辿りついた時にその訳が肌身で実感できた。最後の急登を登る辛さ、恐さは石転び沢以上だったのだ。 勿論、体調のせいもあったと思うが、2度と登りたくないと思うほどきつかった。 昨年の石転び沢のレポは こちら 。 急登を登り始めた直後に見下ろした大岩、これ以降は稜線まで写真なし 門内岳稜線直下の急登に差し掛かるところに大きく露出した岩があった。その岩と雪渓との境界の凹みに入って、風を避けながら最後の休憩を取った。この辺りから上は濃いガスに覆われており視界はすこぶる悪かった。目標とすべき稜線も門内小屋も全く見えなかった。 その上急斜面、ここからは完全にアイゼン、ピッケルの世界である。 かなり疲労も感じていたが、いつまでも休んでいるわけにはいかない。勇気を奮い起こして最後の登りに取り付いた。登りと言うより雪渓登攀という表現が適しているかも知れない。 ここからは自分が先頭になった。登り方を下から指示する為の先輩の配慮であろう。 ピッケルを杖代わりにした登り方ではもう進めなくなっていた。まごまごしていると、先輩の声が飛んできた。「見てご覧」と言うのだ。しかし、恐くて下を見ることはできなかった。 その時、先輩がするすると登って来て横に並んで「分かるか」と言う。その姿勢を見てすぐに了解できた。ピッケルのシャフトの根元を右手で握り、四つん這いの匍匐前進の形であった。勿論、姿勢は起こし気味にしないとアイゼンの爪が雪面に刺さらない。 右手でピックを力いっぱい雪面に差し込み、アイゼンを利かして一歩一歩刻みながらの登攀であった。 12本爪のアイゼンをつけた両足と右腕のピックの3点で重力に打ち勝って自分の身体を持ち上げていく途方も無く忍耐を要する動作の連続であった。 この時左手は無意識のうちにしっかりと雪面をつかんでいた。手で雪面をつかんだところで、身体を支えられるものではないが、胸突き八丁の急角度では無意識のうちに雪面に指を立てるのもうなづける。もっとも、バランス上もこうせざるを得ない。手袋はぐしょぐしょに濡れ、冷たくて手の感覚も無くなっていたが、そんなことにかまっている余裕は無かった。 こういう場合は、両手でピッケルを持つのが正当かなとも思ったが、急斜面の途中で姿勢を変えるのは恐かった。まだまだ未熟である。 どのくらい時間が経ったのか定かではないが、体力はもう限界になりつつあった。ただ、斜面の角度が少しなだらかになってきており、稜線が近づいていることは肌で感じられた。しかし、最後まで気を抜くことはできない。 ところがまずいことに、ここで一気に両足に疲労感が走り、動かすと両太腿の筋肉が硬直し、まさに痙攣を引き起こす寸前であった。ぞっとした。 幸いすぐ横に、雪面が少し凹んだテラス状のところがあったので、とりあえずそこで立ち止まり、肩で大きく息をした。しかし、まだ安全地帯とは言えない。油断したら3時間半掛けて登ってきた4〜5Kmの雪の斜面を一気に滑り落ちて行くことになる。こんな角度の斜面では滑落停止など本当にできるのだろうかと疑問に思う。とにかく絶対に滑り落ちてはならないのだ。 上の方から先輩達の呼ぶ声が聞こえたが、ガスのため姿は見えない。「少し休む」と大声で答えてから、息が整うのを待った。時折、強風が通り過ぎて行った。 しかし、硬直しかけた筋肉はなかなか元に戻らないものである。やむを得ず、足を労わりながらゆるゆると、門内小屋の水場近くまで登っていった。 どうにか難関はクリアーできたものの、さらなる疲れがどっと押し寄せてきた。 門内小屋の鐘、3人の無事を感謝し3つ鳴らした。ガスの中で良く響く鐘だった。 門内小屋で休憩を取り、早めのお昼を食べた。40分の休憩で、如何ほども疲れが取れるわけではないが、後は、稜線を歩き、お花を楽しみ、丸森尾根を下るだけである。 杁差岳の方はハクサンイチゲが満開という情報も入っていたが、門内から地神の稜線はハクサンイチゲもミネザクラもまだ咲き初めであった。2分咲きから7分咲きと言ったところであろうか。場所によって咲き具合もいろいろである。 それでも、これが飯豊のお花だと感慨深く目に映った。 丸森尾根の上部はまだ豊富な残雪に覆われていたが、それを過ぎると、下りの尾根はまさに百花繚乱であった。マンサクから始まって雪融けから初夏の花までのオンパレードである。加えて、コシアブラやウドなど山菜のお土産まで収穫できた。 辛く、厳しい門内沢であったが、また1つ思い出が増えた貴重な山行であった。 歩いた軌跡 TP積算距離 :約16Km 総上昇量 :約1,650 m 総所要時間(休憩含):約9H46分 (登り約4H51分、稜線歩き約1H5分、下り約3H10分、お昼約40分) 行 程 飯豊山荘5:54−6:13温身平−6:50下つぶて石 −7:31石転び出合−(門内沢) −10:20稜線−10:45門内小屋11:25−11:48扇ノ地紙−12:16地神山 −12:30地神北峰−(丸森尾根)−15:40飯豊山荘 門内沢にステップを刻む先輩達 シラネアオイもたくさん咲いていた この辺りには白花のアオイちゃんも 多く見られる。 アオイちゃんと カタクリの 見事なコラボレーション 門内沢点描 7部咲きのミネザクラ 花嫁さんのブーケのよう、花の名前忘れた 群生のハクサンイチゲも良いけど、岩場のイチゲも強さを感ずる。まだ3分咲き? さあ! 丸森尾根の下山開始です。 雲の切れ間にちょっぴり杁差岳が見えました ムラサキヤシオツツジ サンカヨウ 枯松山、大境山方面 鍋倉山、大高地山方面 サラサドウダンツツジの巨樹 さらば飯豊よ! また来る日まで |
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| タイトル (本文) | ブログ名/日時 |
|---|
| 内 容 | ニックネーム/日時 |
|---|---|
凄い雪渓だねえ。おいらには無理じゃ。 |
赤鬼 2008/06/11 07:14 |
赤鬼様 おはようございます。 |
甘納豆 2008/06/11 07:49 |
飯豊入り お疲れさまでした(^^) |
いっちゃん 2008/06/11 07:50 |
お早う御座います。 |
インレッド 2008/06/11 09:33 |
凄い!綺麗!雄大! |
noritan 2008/06/11 12:53 |
いっちゃん こんばんは! |
甘納豆 2008/06/11 18:38 |
インレッドさん こんばんは! |
甘納豆 2008/06/11 18:48 |
noritan様 今晩は! |
甘納豆 2008/06/11 19:11 |
わぁ〜 厳しそうな飯豊の自然、凄いですね〜 |
FUKU 2008/06/11 20:51 |
ほぅ! |
yukitubaki 2008/06/11 22:23 |
FUKUさん こんばんは! |
甘納豆 2008/06/11 22:44 |
yukitubaki様 |
甘納豆 2008/06/11 22:52 |
甘納豆様、門内沢の詰め、登り方の要領がよく判りましたが、怖いですね〜。私はやめておきます(笑)。翌日、安達太良ですか!お元気ですね。 |
テントミータカ 2008/06/12 15:03 |
テントミータカさん こんばんは! |
甘納豆 2008/06/12 20:34 |
ご推薦の蒜場山本日行って来ました。意外に痩せ尾根で緊張しました。躓いて尾根から転落より、自分ペースでゆっくり歩きました。今回下りも厳しい山を歩きしみじみ思いました。どうせ苦労して登るなら下りはスキーで下れる山を選ぼうと!? |
KEN 2008/06/15 20:46 |
KENさん こんばんは! |
甘納豆 2008/06/15 21:52 |
以前 石転び沢から入り、下りの門内沢を利用したことが有ります。 |
輝ジィ〜ジ 2008/06/25 09:03 |
輝ジィ〜ジ様 こんばんは! |
甘納豆 2008/06/25 20:51 |
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